小話9 懲りずにまた書いてみました


またもや、怖い話を作りました。季節なんて完全にスルーです^^;
DAY1、DAY2、DAY3の3つのパートに分かれています。
全部合わせると小話と呼べるレベルを越える量になってしまいますが、
気にせずに読んで下さる方は先にお進み下さい。


「忘れていませんか」

俺の名前は牛宮(うしみや)。
どこにでもありそうな高校の、どこにでもいそうな高校1年生だ。
平凡な毎日の中で、俺は密かに刺激を求めていた。
その望みが、最悪の形で実現していくとは、このとき全く思っていなかったのだが・・・

−登場人物−
牛宮・・・俺のことだ。
小林・・・近所の同級生。いつも俺と同じ時間に登校する仲間だ。
東条・・・近所の同級生。いつも始業ぎりぎりにならないと登校して来ない。
東条の父さん・・・東条とは中学生のころから仲良しだから、東条の父さんのこともよく知っている。
熊田ばあちゃん・・・近所に住むお年寄り。小さい頃から色々とお世話になっていて、祖母よりも仲がいい。
篠崎先生・・・俺の高校で社会を教える先生。生徒の人気が高い。
郷田先生・・・俺の高校で社会を教える先生。生徒に嫌われている。通称「ジャイ○ン」(お察しください)

DAY 1(2009/11/12)
いつもの木曜日。
起床、朝食、更衣と、普段と変わらない朝の作業。
そして、登校。
俺の通学方法は、徒歩で駅へ、そして電車で学校の最寄り駅へ、
そこからさらに学校まで徒歩といった具合だ。

いつものように駅まで歩いていると、近所の熊田ばあちゃんに出会った。
「あら牛宮くん、おはようございます。」
熊田ばあちゃんは、俺が小さい頃から何かとお世話になっている人だ。
優しくて面白くて、いろいろと気が利くので、実の祖母よりも仲がいい。
「遠くの親戚より近くの他人」とはこのことを言うのだろうか。
熊田ばあちゃんが俺に言った。
「牛宮くんねぇ、最近寒いから、ばあちゃんが牛宮くんにマフラーを編んであげたんよ。
今朝完成したから、また今度取りにきてね。」
「本当?ありがとう!じゃあ今日の帰りにでもばあちゃんちに寄るよ。」
「ええ、いつでもいらっしゃい。」
実を言うとマフラーはすでに家に用意してあるのだが、一応感謝の気持ちを伝えておく。

と、その時。熊田ばあちゃんが俺の後方を見て、
「あら、おはようござい・・・え?」
熊田ばあちゃんは俺の後ろにいた誰かに向かって挨拶しようとしたようなのだが、
なぜか途中で止まってしまった。
誰がいるのだろうかと思い、俺は振り返った。

しかし、そこには誰もいなかった。
「あれ?誰かいたの?」
と、俺は熊田ばあちゃんの方に向き直る。

すると、そこにも誰もいなかった・・・・・・・・・・・
つまり、俺のうしろにいたらしい誰かと、俺の正面にいた熊田ばあちゃんがどちらもどこかへ行ってしまい、
俺一人取り残されたというわけだ。
回りを見回してみたが、うまく状況が掴めなかった。
そのときはとりあえず、俺がぼーっとしていただけかも、と思って済ませることにした。
電車に遅れてはいけないので、俺はとりあえず駅に向かった。

そして駅で同級生の小林と出会う。これも普段と変わらないいつものパターン。
小林も、俺の近所に住み、俺と同じ高校に俺と同じ時間に登校する友達だ。

始業は8時30分からなのだが、俺たちはいつも8時より早く学校に着く。
早く学校に向かうことには別に深い理由はないのだが。
ただ、しゃべったり、宿題をしたり、ぼーっとしたり、いろいろする。
入学以来約半年の間に、早い登校は習慣になっている。

8時29分になり、同じく俺の近所の友達だがいつもぎりぎりに登校してくる東条が、教室にやってきた。
これも、普段と変わらない、日常の風景。
そして、普段と変わらない授業が始まる。

1時間目、社会。
これはまだ許せる。
社会の担任の篠崎先生は、30代ぐらいの男の先生だ。
どこか頼りないところもあるが、性格は優しく、授業は分かりやすく、
おまけに授業中寝ている人はスルーするタイプの先生なので、生徒の間では人気の先生だ。
また、授業の合間にある、授業から脱線した話がなかなか面白い。
例えば、先生の双子の弟の話、最近見たテレビの話、話題になっている本の話などだ。
授業を進めているときより、そういう話をしているときの方が先生が楽しそうなので、
見ているこっちも引き込まれる。
俺自身、社会は嫌いではないので、この時間はマシなほうに入る。

しかし、2時間目以降、数学・英語・家庭科・芸術・理科・保健と、面倒な教科が続く。
詳しく触れるときりがない、というか詳しく触れたくないのでこのあたりは省略する。
放課後は、バレー部で19時まで部活をする。
帰る頃にはくたくたになって、家に着いたら眠気がどっと襲ってくる。
宿題なんて明日やればいいやと、だるい体を引きずってベッドに飛び込む。
これも、普段と変わらないこと・・・

もはやこれ以上述べることはないので、1日目はこれくらいにする。
俺の日常を理解してもらえたらそれだけで結構だ。
だれでも過ごすような、平凡な毎日だっただろう?
ある1つの出来事を除けば・・・


DAY 2(2009/11/13)
翌日の金曜日。
また普段と変わらない朝の作業を済ませ、登校。
今日は熊田ばあちゃんには出会わなかった。
また、小林が駅に現れなかった。
後で分かったことだが、小林は風邪で学校を休んでいた。
大したことではないらしく、月曜日には登校できるとのことだった。
それ以外はすべて普段通り。

学校に着き、玄関にさしかかったとき、社会の篠崎先生に出会った。
「おはようございまーす。」
「おう、おはよう、牛宮。今日も早いなぁ。
いつもこの時間に登校して、何をしているんだ?部活の朝練はないんだろう?」
「ははは・・・そうですねぇ、まあいろいろですよ。」

と、その時。篠崎先生が俺の後方を見て、
「あれ、なんでお前ここに来てるんだ?」
篠崎先生は俺の後ろにいた誰かに向かって声をかけたようだった。
誰がいるのだろうかと思い、俺は振り返った。

しかし、そこには誰もいなかった。
「え?だれもいませんよ?」
と、俺は篠崎先生の方に向き直る。

すると、そこにも誰もいなかった・・・・・・・・・・・
つまり、俺のうしろにいたらしい誰かと、俺の正面にいた篠崎先生がどちらもどこかへ行ってしまい、
俺一人取り残されたというわけだ。
これって、昨日も似たようなことがあった気がするが・・・
回りを見回してみたが、やっぱりうまく状況が掴めなかった。
まあ、篠崎先生とは今日の1時間目に社会の授業で会うし、気にすることもないだろうと思い、
普段通り始業時間まで過ごした。

1時間目、社会。
いつも授業開始までに教室にいる篠崎先生が、なぜか来ない。
先生がいないのをいいことに、みんなは好き放題して過ごしていた。
15分後、同じく社会を教える郷田先生がやってきた。
「えー、篠崎先生は今日来られてないようですので、代わりに授業を行います。」

「うっそ〜、マジかよ。」
「来なくて良かったのに・・・」
「勘弁してくれよホントに。」
その瞬間、クラスのほとんどの生徒からブーイングが飛んだ。
それは、先生がいない「放し飼い状態」の時間が終わったからではない。
郷田先生が篠崎先生と対照的な先生だからだ。
篠崎先生と同じく30代の男の先生だが、
体格はがっちりしていて、性格は粗暴で、授業の進め方も生徒に対して容赦しない。
おまけに、フルネームが「郷田武義(ごうだたけよし)」である。
これは、某ネコ型ロボットが活躍するアニメにおいて、
現代では天然記念物より貴重な存在であるガキ大将というキャラクターを演じる「あの人物」と名前が酷似している。
もっと言えば、名前だけでなく、雰囲気までまさにあんな感じである。
よって、郷田先生のあだ名は「ジャイ○ン」である。(お察しください)
「○ャイアンの授業を受けるぐらいなら学校に来ない方がいい」という人もいるぐらいだ。
だから、みんなの反応は当然と言えば当然だ。

だが、俺はむしろジャ○アンの発言内容に疑問を持った。
「せんせーい、俺、篠崎先生と朝会いましたけど
「なに?そんなはずはないだろう。
朝の職員会議の時も、連絡なしで休まれていたから先生方みんな不思議がっていたんだぞ。
「そうなんですか?」
もし篠崎先生が始めから来てなかったとしたら、
俺が先生を見たというのは気のせいだったということになる。
それなら、先生が突然消えたのも説明がつく。
寝ぼけてでもいたのか、
俺は来ているはずもない篠崎先生に出会ったような気がして挨拶をして、途中で正気に戻った
ということか。
でも、そんなことってあるのだろうか・・・

「ジ○イアンの授業とかマジありえんし。」と、東条。
「篠崎先生、どうしたんだろう?やっぱり朝見たような気がするんだけどなぁ。」と、俺。
「気のせいだろ。それよりあの先生、風邪なんか引く人じゃないよな?小林と違って健康な人だし。」
「てか、あの先生が休んだのってこれが初めてじゃない?」
「マジかよ。なんか事故ったりしたんじゃないの?」
久しぶりにジャイア○の授業を受けてやる気がどん底になった俺と東条の話題は、
ジャイ○ンへの不平と篠崎先生への心配にしぼられた。

放課後、部活をして、帰宅。
家に向かっている時、俺は思い出した。
昨日、熊田ばあちゃんの家に手作りのマフラーを受け取りに行くのを忘れていたのである。
俺は進路を変えて取りに行くことにした。

熊田ばあちゃんの家に着き、インターホンを押してみた。
しかし、誰の反応もない。
玄関のドアを開けてみる。鍵はかかっていなかった。
「熊田ばあちゃんいる?牛宮だけど。」
家の中に呼びかけても、やはり何も起こる気配がない。
熊田ばあちゃんは一人暮らしだから、外出していれば家に誰もいないことになる。
だが鍵が開いているということは、やはり家の中にいるのだろうか?

この家には何度か上がったことがあるので、部屋のつくりは分かっていた。
居間に入ってみると、そこには熊田ばあちゃんがいた。
だが、様子がおかしい。なんと、床にうつ伏せで倒れている!
「熊田ばあちゃん?こんなところで何してるの?」
仰向けにしてやり、体をゆすって声をかけても、まるで反応がない。

しばらくして、俺は気がついた。
熊田ばあちゃんが、   呼吸をしていないことを・・・

「熊田ばあちゃん!?しっかりして!!熊田ばあちゃぁぁん!!」
だが、だめだった。
皮膚の色から血の気が感じられず、体温すら感じられず、人形のように微動だにしない熊田ばあちゃんを見て、
俺はひとつの判断を認めざるを得なくなっていった。
そう、

熊田ばあちゃんは死んでいる   と・・・

冷静になって考えてみる。
部屋を見回してみたが、特に荒らされた様子はないことから、
誰かにやられたというわけではないと思われた。
そして机の上には、編みかけの紺色のマフラーが置かれていた。
これが、俺の為に作ってくれたマフラーだろうか。
しかし、昨日熊田ばあちゃんは「今朝完成した」と言っていたはず・・・
とりあえず俺の力ではどうにもなりそうにないので、病院に連絡して救急車を頼んだ。

今日起こったこれ以降のことは、話すと長くなるので省略する。
ただ、後で分かったことだが、熊田ばあちゃんはやはり亡くなってしまっていたらしい。
しかも、一昨日の夜から昨日の早朝の間のどこかの時間に心筋梗塞で突然死したという話である。


昨日の朝、普段通りの熊田ばあちゃんを見たのは、またも俺の気のせいなのか・・・?


熊田ばあちゃんには身寄りがなかったので、その葬儀は町内会が行った。
そして俺を含めうちの家族も参加したわけだが。
土曜日に通夜、日曜日に告別式。
言い方は悪いが、俺は土・日の自由な時間がかなり削られたというわけだ。
だが、やはり熊田ばあちゃんの死は俺にとって重かった。

DAY 3(2009/11/16)
次の週の月曜日。
俺の父さんは、「仕事の都合で火曜日の午後まで家に帰れない」と、今日の朝早くから家を出ている。
俺は我が家で2番目に家を出発し、駅へ徒歩。
今日は小林も風邪から復帰して、俺と同じ電車で学校に向かった。

朝、学校で、ホームルームのときに担任の先生が言った言葉。
これを聞いて、みんなは絶句した。

「皆さんに、悲しいお知らせがあります。
社会の篠崎先生は、

交通事故で亡くなられました・・・

「・・・」

詳しく話を聞くと、事故の相手は、篠崎先生の双子の弟の知り合いだったようだ。
篠崎先生の方は重体だったが、その人は軽症で済んだので、すぐに救急車を呼んだ。
その時、その人は篠崎先生のことを弟の方だと勘違いしたらしい。
篠崎先生の双子の弟は今もちゃんと生きているのだから、いろいろと混乱があった。
それで真実が明らかになるのに時間が掛かったということだった。
また、篠崎先生は金曜日の朝に亡くなっていたらしい。
こうなると、俺が金曜日の朝に篠崎先生を見たのは気のせいだったということになる。
死んでしまった人間に出会って挨拶をすることなどできるはずもないからだ。
だが、本当にそれでいいのだろうか・・・?
俺は自分の視覚が信用できなくなっていった。

その日の帰り、俺は駅から自宅に向かって歩いていた。その時。


ターン


静寂を切り裂く鋭い音がどこかから響いた。
それは次の瞬間にもう1発鳴った。


ターン


今度は、さっきより音が鳴った場所が近い。
とその時、向こうからこちらに走ってくる人影が見えた。
東条の父さんだ。
東条とは中学生のときから仲良しで、俺は東条の父さんのことも知っていた。
向こうも俺のことが分かったらしい。
「おお、牛宮くん。大変だ!
この辺りで、拳銃を乱射している馬鹿者がいるみたいだ!!
さっき銃声が鳴るのが聞こえたかい?」
「ええっ!!マジっすか!?」
「ああ、さっさと家の中に入って安全確保した方がいいぞ。
さあ、気をつけて早く帰るんだ!」
「OK!そっちも気をつけて!」
そして、東条の父さんは俺の横を通り過ぎようとした。そのとき、

「・・・あっ!!」
東条の父さんが俺の背後を見て、驚いた表情を見せた。
もしかして、銃乱射野郎がすぐそこに迫っているのか?!
俺はとっさに振り返った。

しかしそこには誰もいなかった。
だが安心はできない。さっさと家に帰らないと危ない!
東条の父さんは姿が見当たらなかった。いつの間にかどこかへ走って逃げていったようだ。
俺はとにかく走って家へ向かった。
この近くには民家が少なく、近くて安全な場所は自宅だった。
それでも、全速力で20秒ほどの距離がある。
俺は走った。

と、道の途中に何かが転がっているのを見かけた。
それを見ると・・・なんと東条の父さんが倒れていた。
首のあたりに銃で撃たれたような跡があり、血が噴き出している!!
その時、俺は不可解に思った。

東条の父さんが走ってきた方向に向かって俺は走っているのに、その道の途中に東条の父さんが倒れている・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?!
しかも、俺はついさっき東条の父さんと別れてから一度も銃声を聞いていない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・のに?!!

しかし、俺は止まるわけにはいかなかった。今は自分を守るのが優先だ。


ターン


3回目の銃声が響く。早く家に帰らなくては!

あと少しだ・・・

よし、家に着いた。はやく中へ!
ふぅ、助かった。

飛び込んできた俺を見て、家族でただ一人家にいた母さんはびっくりした。
「おかえり。どうしたの、そんなに慌てて。」
俺は事情を説明しようとした。

と、その時。母さんの後方に、誰かが立っているのに気づいた。
3人家族の我が家に、俺・母さん・仕事で出ている父さん以外の家族がいるはずはない。
とすると、母さんが家に呼んだお客さんだろうか。
それにしても、その人の顔を見てみると、なんだか俺に似ているような気がした・・・
着ている制服まで俺と同じじゃないか。
そこに立っていた誰かの顔をよく見て、俺は絶句した。


こいつ、   俺じゃないか・・・


自分を鏡で見たかのように、目の形からホクロの位置まで、何から何まで俺と同じ。
細かく言えば、鏡と違って左右は反転していないのだが・・・
俺がもう一人いるなんて、そんな馬鹿なことがあるわけがない!
「え・・・母さん、後ろにいる人は誰?」
俺の言葉に母さんは振り返った。
その瞬間、母さんの後ろにいた誰かが、母さんの体をすり抜けてこっちにやって来た。
こいつは幽霊なのか?!
そして母さんは、
「何のこと?誰もいないわよ。」
と、俺の方に向き直ろうとした。その瞬間、俺の目の前に現れたそいつが、俺を・・・

その瞬間、俺は思い出した。
さっきまで逃げるのに夢中で忘れていた。
そう、

俺はすでに死んでいた・・・・・・・・のだ・・・

そうだ。今、確かに俺は死んでいる。
何も見えず、何も聞こえず、何もしゃべれない。体を動かすこともできない。
強烈な吐き気がする。だが、吐く気にはならない。
全身にかゆいような痛いような不思議な感じがする。だが、何とも感じていないような気もする。
言葉では表しがたい変な気分がする。だが、その気分を心地よくも感じている。
生きていたときと、何かがまるっきり違うのだ。

死んだのはいつのことかはよく分からない。
あまりに突然のことで自分の死を自覚する事が出来なかったのだと思う。
本当の俺はどこかで屍となっていたのに、
まだ生きている気で、銃乱射野郎から逃げて家へやってきたつもりでいた。
ところが、どういうわけか俺の分身が現れ、・・・
よく覚えていないが、俺に何かをしたんだ。その部分の記憶がはっきりしない・・・
それで、俺は自分の死を思い出すことになった。

そういえばよく考えると、先週の木曜日から俺は不思議な体験を何度もしている。

木曜日の朝、熊田ばあちゃんが目の前で突然消えた。
その熊田ばあちゃんは、前日には心筋梗塞ですでに死んでいたという。

金曜日の朝、篠崎先生が目の前で突然消えた。
その篠崎先生は、その日の朝には交通事故ですでに死んでいたという。

そして今日、東条の父さんが目の前で突然消えた。
その東条の父さんは、俺が次の銃声を聞く前に、銃で撃たれて倒れていた。

これらは全く説明のしようがない。
全部俺の見まちがいだったのだろうか、幻だったのだろうか・・・
生死の境がはっきりしないというのは、かなり奇妙な話だ。

いっそ、俺は木曜日の朝までに死んでいて、今日までのことは全て俺の想像だったとか・・・
そう考えると、俺は一体いつ死んだのか、本当に分からなくなってくる。
自分の死を思い出す直前まで、俺は生きているつもりだった。
しかし思い出してみると、それより前にはすでに死んでいたことだけは分かる。
生死の境は、こんなにもあやふやなものなのだろうか?
わけがわからない。



俺は、一体いつ死んだんだ?



俺は、一体何を見たんだ?



俺は、いつ死んだ?



俺は、



俺は、・・・なにもわからない。







この話を読んだ、読者のみなさん。
みなさんは、   まだ生きていますか?
最近、「死にそうになった」という経験をした方。
自覚する時間もなく、
本当はもう死んでしまっていることを、忘れていませんか?
あなたの分身が迎えに来たら、真実が分かることでしょう。




あとがき
今回は、リアルさを重視した話を作ってみましたが、いかがだったでしょうか。
ここで終わってしまえば、単に「怖い話」にとどまってしまいそうですが、
実はこの話は、全ての真相が分かった後にもう一度読み返すと、
それまで謎だったことの説明がつくようになっています。
詳しくは、そのうちに「真相解明モード」として公開する予定ですが・・・
(2010/04/10)「真相解明モード」公開しました。
(しかし、皆さんにはなるべく悩んで頂きたいので、かなり分かりにくいところに公開してみました。
このあとがきのどこかをクリックすると移動できるようにしておきました。十分に考え尽くした方は探してみて下さい。)

まぁ、すぐ近くにあるんですけどね^^;
「真相解明モード」をご覧になる前に、読者の皆さんに考えて頂きたい事があります。
この小話で起きた不思議な出来事は、いったいどのように起こったのか。
具体的には、

・牛宮が死んだのはいつかという謎
・人間が突然いなくなる現象の謎
・死んだ3人の不可解な死亡時刻の謎

この3点を是非考えて解き明かしてみてください。
なお、念のために以下の内容をあらかじめ断っておきます。

・「すべて牛宮の夢だった」等、物語の内容を無視するような解答は禁止です。
 そもそも、3日分(DAY2とDAY3の間には土日があるので実質5日分)もの夢を見ることは考えにくいでしょう。
・「この世界では死者が蘇るor時間の逆戻り等が可能」等のファンタジーな解答も禁止です。
 実際には絶対有り得ないような設定を追加せず、確率は低くても実際に起こるかもしれないような解答を考えて下さい。
・牛宮は、DAY1の最初には確実に生きていて、DAY3の最後には確実に死んでいるものとします。
 つまり、牛宮が述べている「牛宮は木曜日(=DAY1)の朝までに死んでいて、
 今日(=DAY3)までのことは全て牛宮の想像だった」
という仮説は正しくないということです。
 というか、全て想像だったとすると物語の内容を無視するような解答となってしまうのでどちらにしろダメです。

 ところで、物語のラストに死んだ牛宮の思考が描かれています。
 「死者が何かを考えるなんて有り得ない」という意見があるかもしれませんが、
 霊能力者などを通じて死んだ人のメッセージが現実世界に伝えられることもあるように、
 「死んだ人間も意志だけは持っている」という前提で考えて下さい。
 (この物語は牛宮の視点で描かれているので、死んだ牛宮の思考も知ることが出来るということです)
 死んだ人間がどうなるのかは誰も知りようがないので、
 この前提は「実際には絶対有り得ないような設定を追加する」ことにはならないとします。




(2010/02/18公開)

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